春すぎて夏来(き)にけらし白妙(しろたへ)の衣(ころも)ほすてふ天(あま)の香具山(かぐやま)

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今日の歌

持統天皇(2番)『新古今集』夏・175

春すぎて夏来(き)にけらし白妙(しろたへ)の衣(ころも)ほすてふ天(あま)の香具山(かぐやま)

現代語訳

いつの間にか、春が過ぎて夏がやってきたようだ。

夏になると真っ白な衣を干すと言う、あの天の香具山に(あのように衣がひるがえっているのだから)。

 

解説

【夏来にけらし】

「けらし」これは「けるらし」がと同じ意味。「らし」は推測の助動詞で、らしいと訳す。

 

【白妙の】

真っ白な布のこと。布への枕詞

 

【衣をすてふ】

衣を干すと言う意味、「てふ」は「という」のつづまる言い方

 

【天の香具山】

「香具山」とは、奈良県にある低い山のこと。

大和三山の一つで、天から降りてきたと言い伝えられている。したがって「天」がつく。

 

 

香具山とは100m未満の低い山であり、山腹に白い布が干されているのがすぐにわかる。

天から降ってきたとされる香具山に、白い布。何か神秘的なものでも感じていたのだろうか。山の深緑、白妙の布の白さ。色の対比がとても美しい歌である。

夏というのは気温も上がり、憂鬱に感じてしまう季節でもある。しかし、植物は生い茂り、日照時間が長くなる。季節の美しいさを意識するだけで、1日は充実したものへと変わるのではなかろうか。