逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし

f:id:kavaoblog:20200613062752j:image

 

今日の歌

中納言朝忠(44番)『拾遺集』恋一・678

逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし

 

現代語訳

会うことが絶対無いのなら、かえって、あの人のつれなさも自分の辛さも、恨むことはないのに…

 

【逢ふこと】

男女の逢瀬のこと

 

【絶えてしなくては】

「絶えて」は副詞、下に打ち消しの語を補うことで、「絶対に〜しない」という意味。

「し」は強意の間投助詞、間投助詞は文末に置くことで、強意や詠嘆を表す。

「なくては」は反実仮想、現実と違うシチュエーションの時に使う。英語でいうところの「if」

 

【なかなかに】

かえって、なまじっかという意味。

 

【人をも身をも】

「も」は並列の係助詞

相手の不実も自分の不幸もという意味になる。

 

【恨みざらまし】

「ざら」は打ち消しの「ず」の未然形

「まし」は反実仮想

恨むことはしないだろうの意

 

 

帰って冷たくされると気になってしまったり、距離が近いと嫌いになったり、世の中の色恋は難しいもである。

この歌のように、古くからクールな人は魅力的に見えるものだったのだろう。

冷たくするならいっそのこと会いもしなければいいのに、今も昔も人の感情は変わることのないものがあるのだろう。

ぜひ、悩んでいる友達がいたら、

逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし

なんて詠んであげると粋ではないだろうか?

その時には、今も昔も悩みは一緒だね!なんて添えてあげて欲しい。