玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする

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今日の歌

式子内親王(89番)『新古今集』恋一・1034

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする

 

現代語訳

我が命よ、絶えてしまうのなら絶えてしまえ。このまま生き長らえていると、堪え忍ぶ心が弱ってしまうと困るから。

 

【玉の緒】
もともとは、首飾りなどに使われる玉を貫いた緒(を。ひものこと)のこと。

ここでは「魂を身体につないでおく緒」の意味で使われています。

「絶え」「ながらへ」「よわり」は、緒の縁語で、どれも緒の状態に関係している

 

【絶えなば絶えね】
「絶えてしまうのなら絶えてしまえ」という意味の語気の強い言葉。

下二段動詞「絶ゆ」の連用形に完了の助動詞

「ぬ」の未然形「な」と接続助詞「ば」で、順接の仮定条件「絶えてしまうのなら」になる。

下の「絶えね」の「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形で、「絶えてしまえ」という意味。

 

【ながらえば】
「絶えなば」と同じく、下二段動詞「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」がついて、順接の確定条件を示す。「生き長らえてしまうのならば」というような意味。

 

【忍ぶる】
「堪え忍ぶ」という意味です。上二段動詞「忍ぶ」の連体形。

【よわりもぞする】
係助詞「も」と「ぞ」が重なり、「~すると困る」という意味になる。

「ぞ」+「する」で係り結びになる。

秘めた恋を堪え忍ぶ気持ちが弱くなって、恋が露見すると困る、というような意味。

 

 

緒の縁語で片思いを描いた美しい俳句。

許されざる思いを持ちながら、隠しきれない現実。

バレてしまうならいっそ死んでしまいたいという気持ちが現れている。

相手がいる人にに恋をしたらこんな者なのだろうか。