お香。
お香。
僕は寝る前にお香を焚いて寝る。
このお香を焚くことで快眠につながるのだ。
ただ、寝れないからお香を焚くのではないし、眠りたいからお香を焚くのではない。
ただお香を焚くのだ。
ゆず、ジャスミン、ラベンダーにマリン僕の家には沢山の種類のお香がある。
しかし、僕は生まれつき鼻が弱く、匂いの感覚が鈍い。お香の香りはほのかに感じるが、特別感じるわけではない。
だからといってお香をずっと眺めているわけでもない。
ただお香を焚くのである。
お香を焚いている雰囲気が好きなのだ。
側から見れば、お香を焚く時も焚かない時も一緒のように感じるだろう。
しかし、そんなことは関係ない。
1日の終わりに、好きな雰囲気のお香を焚く。ただそれだけで、ただそれだけが、一日を締めくくる。
また、心がざわつくときにもお香を焚く。
ふに落ちないとき、苛立ちが現れたとき、僕はまた、お香を焚く。
安らぎの香り、甘い香り、爽やかな香り。そんなものは関係ない。
ただお香を焚く。
お香を焚くという雰囲気が僕を満たし、難しいことはどうでも良くなる。
香り、煙、色、形、僕にはこだわりがひとつもない。
気分で散歩道を選ぶように、何も考えず、気分で今日もお香を選ぶ。
今日の気分はマリン。
海の香りがするらしい…。