山川(やまがわ)に風のかけたるしがらみは流れもあへ(え)ぬ紅葉なりけり

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今日の歌

春道列樹(32番)『古今集』秋下・303

山川(やまがわ)に風のかけたるしがらみは流れもあへ(え)ぬ紅葉なりけり

現代語訳
山の中の川に、風が掛けた流れ止めの柵(しがらみ)がある。それは、流れきれないでいる紅葉の集まりだったよ。

 

ことば
【山川(やまがわ)】
山の中にある川、谷川のこと。「やまがわ」という読みが重要  で、「やまかわ」と読むと「山と川」という意味になる。

【しがらみ】
「柵」と書いて「しがらみ」と読む。川の流れを堰き止めるために、川の中に杭を打って竹を横に張ったものです。ここでは「風がしがらみを掛けた」とあるので、風を人のように扱う擬人法を用いている。

【流れもあへぬ】
流れようとしても流れきれない、という意味。「あへぬ」は、「あふ」の打消し形で「~しきれない」の意味。

【紅葉なりけり】
「紅葉なりけり」の「けり」は、今気づいた、という感動を示す。またこの歌は、紅葉を柵(しがらみ)に「見立て」ている。

 

鑑賞

山の中の川を見ると、たくさんの落ち葉が集まって流れを堰き止める柵ができている。

紅葉の美しい情景が目に浮かぶ美しい歌である。