あいつが来ない

 

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最近暑い日が続いている。

扇風機と時計、そしてジャスミンの香りがするお香が睡眠導入剤だ。

乱暴に振りかざすプロペラ、時間のメトロノーム、そして柔らかく爽やかなジャスミンの香りが、何とも心地よい。

 

「明日も早起きか…明日こそはあいつより早く行こう。」

 

毎朝のマクドナルドへの足を運ぶ義務感と友達に会える期待感を心に、深い眠りにつくーーー

 

 

 

目覚ましよりも先に目が覚めた。

最近は朝の日差しが強い。寝足りないな…そんなことを思いながら、眼を閉じることへの欲望をカーテンの音で打ち消す。

朝食を口に含み、水で流し込む。

「最初の一口は味がしないな…」

「今日はあいつより早いかな…」

なんてことを思い浮かべながら、徐々にクリアな日常へと踏み入れる。ーーー

 

 

 

身支度を済ませ、自転車に乗り、朝日を浴びる。

最近は朝日が暑い。

梅雨入り間近の太陽は暫く顔を出せないことに申し訳無さでも感じてるのだろうか。

自慢のマウンテンバイクで坂を降り、まるで物語の主人公になったかのような気持ちで風を切る。

あいつより先に…あいつより早く…

「おはようございます!」

マクドナルドの店員はいつも明るい。

いつもなら、マニュアル化されたアルバイトの日常を憐れに思うのだが、今日の太陽は、そんな気持ちさえも明るく照らした。

「おはようございます!アイスコーヒーSとアップルパイを一つ!」

いつもは頼まないのにアップルパイを頼んでしまった。

アップルパイの甘い匂いとコーヒーの香ばしさが、僕の心を躍らせる。ーーー

 

 

ページをめくり、ペンを走らせる。そして時計を見る。たまにスマホをいじり、ページをめくる。そして…また時計を見る。

時計を見る回数と比例して、

徐々に気持ちは曇り始める。

 

「あいつが来ない…」