心あてに折らばや折らむ初霜の おきまどはせる白菊の花

今日の歌

凡河内躬恒(29番)『古今集』秋下・277

心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花

 

現代語訳

もし手折(たお)るならば、あてずっぽうに折ってみようか。真っ白な初霜が降りて見分けがつかなくなっているのだから、白菊の花と。

 

 

意味

【心あてに】
「あて推量に」「あてずっぽうに」などの意味。

 

【折らばや折らむ】
「折らば」は四段活用動詞「折る」の未然形に接続助詞「ば」がついたもので仮定条件。

「や」は疑問の係助詞。

「む」は意志の助動詞で上の「や」と係り結び。

「もしも折るというなら折ってみようか」という意味。

 

【初霜】
その年はじめて降りる霜のこと。

 

【置きまどはせる】
「置く」は、「(霜が)降りる」という意味。

「まどはす」は、「まぎらわしくする」という意味。

白菊の上に白い霜が降りて、白菊と見分けにくくなっている、という意味。

 

【白菊の花】
上の句の「折らばや」に続く、倒置法。

 

 

鑑賞

これは、真冬の歌。

霜が降りて、どの花が白菊なのかもわからない。いっそのことあてずっぽうに追ってみようかと言う、冬の柔らかな情景が浮かぶ。

白菊の花が倒置法になっているため、自然と白菊の花に目がいくようになる表現技法だ。